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高森明勅
2015.2.7 14:29

誇示する残虐、隠蔽される残虐

イスラム国については、
圧倒的に「残虐」というイメージが強いだろう。

確かに、残虐非道。

それはその通り。

だがそれは、イスラム国自身があえて残虐さを露出させ、
誇示し、演出しているから、という側面もある。

そうやって、敵を威嚇し、恐怖に陥らせ、
自らの強さを印象付ける戦術なのだ。

その点を見落とすと、まんまと彼らの戦術に乗せられることになる。

具体的なデータで見るとどうか?

イラクのティクリートを陥落させた時、捕虜の大量処刑があった。

イスラム国は
「政府軍兵士の捕虜のうち、シーア派1700人を処刑した」と発表。

但し、実数は数百人程度とも。

また、イラク北部に住むヤジディ教徒が大虐殺されたとされる。

その実態は、殺害されたのは500人以上。

300人程の女性が拉致されたようだ。

更に、イスラム国の武力攻撃に伴う“治安悪化”による
イラクでの死者は1万人弱(2014年1〜9月)とか。

これに対し、例えばイスラム国誕生のきっかけを作った、
アメリカの「大義なき」イラク侵攻での死者は? 

イラク人約100万人。

この他、約300万人が難民となった。

ちなみに、イラクの人口は3000万人強。

一体、どちらがより残虐なのか? 

また斬首による処刑は、
我々日本人にはいかにも残虐陰惨な印象を与える。

だが、イスラム諸国では必ずしも忌避されず、
現にサウジアラビアでも、金曜日には公開で行われている。

更に、人々を驚かせた異教徒の奴隷化も、
イスラム国が主張するイスラム法上の典拠は、
通説を逸脱したものではないという。

征服地の異教徒を奴隷にすることは、
イスラム法で明確に規定された行為のようだ
例えばマーワルディー『統治の諸規則』。池内恵氏による)。

なお、アメリカの「対テロ戦争」の特色の1つは、
捕獲した敵側戦闘員を国際法上の戦時捕虜や、
国内法上の犯罪容疑者に認められている権利や、
合法的な手続きを一切、無視して、各国に散在する秘密施設
キューバのグアンタナモ収容所など)に長期間拘束し、
拷問を繰り返す、法を無視した残虐なやり方だ。

オバマ大統領は選挙公約にグアンタナモ収容所の閉鎖を掲げていた

しかし、まだ実現していない。

「対テロ戦争」(テロとの戦い)には、
こうした残虐陰惨な現実がつきまとう。

安倍政権はそれを分かった上で、
「戦争」に飛び込もうとしているのか。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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